国土技術研究センターによると、マグニチュード6以上の地震の20%は日本で起きているそうです。
また、日本は、地震以外にも火山噴火や巨大台風、集中豪雨などの大災害にたびたび見舞われています。
今後も、日本にいる限り大災害が発生することを前提とした災害対策は必要不可欠といえるでしょう。
では、医療機関としては、どのような対策が求められているのでしょうか?
医療機関におけるBCPとは?
医療機関は、大災害によって自院が被害を受けたとしても、患者の救命・救護に努め、医療活動を継続していく必要があります。
そのため、厚生労働省は2017年3月に災害拠点病院の指定要件を改正し、事業継続計画(BCP:Business continuity planning)の整備を必須要件にしました。
BCPとは、自然災害や大火災などの緊急事態に遭遇したときに、事業の継続または早期復帰を目指せるよう、常日頃から災害時に取るべき行動やその優先順位などを取り決めておく計画のことです。
災害時に怪我人が殺到することを想定すると、災害拠点病院だけでなく、すべての医療機関で整備しておく必要があります。東日本大震災では、少なくとも138人の防ぎ得た災害死があったといわれています。
BCPが整備され、適切に運用されれば、その半分は防げる可能性があったとの報告もあるのです。
BCP策定率は7%にとどまる
内閣府が2013年に行った調査によると、BCP策定済の医療機関はたった7%で、災害拠点病院でも3割という結果となりました。
規模が小さくなるほど策定率が下がる傾向から、診療所の多くではBCPという言葉すら知られていない可能性があります。
一方、実際に東日本大震災や熊本地震で診療にあたった医療機関では、事業継続や救護で混乱を極めた経験からBCPを策定するところが増えているようです。
では、具体的にどのようにBCPを策定すればよいのでしょうか?
BCPの策定ガイドラインとは?
いくつかの自治体では、医療機関におけるBCPの作り方が紹介されています。
例えば、東京都のホームページで公開されている策定ガイドラインでは、ステップ1~8までの手順でわかりやすく作成方法が示されており、さらにBCP文書サンプルも掲載されています。
作成にあたって重要なことは、経営者(院長)がリーダーシップを発揮し、スタッフ全員を巻き込み、作り込んでいくことです。
熊本地震被災後BCP策定に着手したある診療所では、全職員が参加し、それぞれが災害時に優先して行うべき作業を書き出したそうです。
もちろん、職種や立場によって優先すべき内容は変わってきますが、“患者救命にとって何が一番必要か?”という観点から調整を図り、BCPを完成させました。
その中には、“在宅に使う車のガソリンメーターが半分を切ったら満タンにする”など、平時からの取り組みも盛り込まれています。
透析や人工呼吸器を使用している患者など、災害時でも治療継続を要する患者を抱える診療所はもちろん、そのほかの診療所でも、今後はトリアージを導入し、混乱を最小限に抑えるための工夫が期待されています。
“災害は必ず起きるもの”と想定した上でBCPを策定することは、地域から信頼される診療所づくりそのものといえるでしょう。